本をたくさん読みたい。
これはたぶん、本好きなら一度は思うことです。
僕もそうでした。
昔は図書館で定期的に小説を借りていました。
でも、仕事と育児が重なると、「目で本を読む時間」というのが思った以上に取れません。
スマホを見る時間すら削られる日もあるのに、何百ページもある小説をじっくり読むなんて、なかなか現実的ではありません。
それでも、何かしら物語に触れていたい。
そんなときに思いました。
「だったら、聴けばいいのでは?」
Audibleは、いわゆる“聴く”本=オーディオブックです。
ながらで聴けるはずだった
本を“読む”のではなく、“聴く”。
これなら、家事をしながらでもいける。
洗濯物をたたみながら。
皿を洗いながら。
子どもを寝かしつけたあとに、ぼーっとしながら。
“ながら”で消費できる。
これならいける気がしました。
むしろ、これまで本を読む時間が取れなかった分、取り返せるのではないかとすら思いました。
ここまでは、かなり理にかなっています。
イヤホンが見えていない世界
実際に始めてみると、最初にぶつかるのは予想外の壁でした。
子どもたちです。
洗濯物をたたみながら、イヤホンで小説を聴く。
数分後。
「ねえパパ、これ見て!」
「パパ聞いてる?」
「ねえ!」
完全に通常通り話しかけてきます。
あれ?と思いました。
僕は今、イヤホンをしているはずです。
もしかして、僕のイヤホンは心が純粋な子どもには見えないのかな?
結果として、話しかけられるたびに一時停止。
少し巻き戻し。
また再生。
また話しかけられる。
気づけば、ほとんど進んでいません。
一人の時間で取り返す
家では無理だと悟った僕は、方針を変えました。
ジムです。
ここなら一人です。
誰にも話しかけられません。
トレッドミルを歩きながら、イヤホンで小説を聴く。
ようやく、まともに物語に集中できる環境を手に入れました。
ここで一気に“取り返そう”とします。
この時点で、すでに少し怪しい方向に進み始めています。
元を取ろうとし始める
Audibleは月額制です。
ここで、いつものやつが出てきます。
「せっかく払ってるんだから、元を取らないと」
ジムでもやりました。
月14回のジム通いを義務にした結果、10年間ずっと疲れている話です。
映画でもやりました。
U-NEXTで映画が義務になった話です。
ギガでもやりました。
ギガを使い切ろうとして壊れた話です。
別の方向では、
通信費を月968円に抑えようとして不自由になった話もあります。
そして、またやっています。
本来は、聴きたいときに聴けばいいはずです。
でも僕は、「どれだけ聴けたか」を意識し始めました。
今日はどれくらい再生したか。
あと何時間聴けるか。
このペースでいくと、1冊あたりの単価はどれくらいになるのか。
ちなみに、初回登録で数ヶ月無料になっていたり、しばらくすると割引オファーが届いたりすることもあります。
こういうのを見ると、どうしても「元を取らないと」という気持ちが出てきます。
もうこの時点で、かなり危険です。
倍速という名の効率化
さらに効率を上げようとします。
再生速度です。
最初は2倍速にしました。
しかし、速すぎて何を言っているのか分かりません。
そこで1.5倍速に落としました。
聴きやすい。
これならいける。
そう思いました。
でも、数分後にはこう考え始めます。
「このスピードだと、元が取れないのでは?」
そして、また2倍速に戻します。
体感は10倍速です。
内容は、右から左へ爽やかに通過していきました。
スキマ時間が消える
さらに問題が起きます。
U-NEXTと同時契約している期間です。
スキマ時間ができたとき、こう考えます。
「今は映画か?それともAudibleか?」
どっちのほうが効率がいいか。
どっちのほうが“消化”できるか。
悩みます。
そして、悩んでいるうちにスキマ時間が終わります。
何も再生されませんでした。
作品ではなく、消化できるものを探す

作品選びも変わってきます。
本当に聴きたい小説があります。
でも、長い。
重い。
今の疲れた状態で最後まで追える自信がない。
そうなると、基準が変わります。
「短いかどうか」
「軽い内容かどうか」
「今の体力で“消化”できるかどうか」
本来は、読みたい作品を選ぶはずでした。
でも僕は、“処理できる作品”を探していました。
なぜか自己啓発にキレる
結果として、短くて軽そうな自己啓発系に手を出します。
そして数分後、こうなります。
「意識高い系の都合のいいことばっか言ってんじゃねーよ!」
こちらは、仕事と育児で普通に疲れている会社員です。
そんな状態で「朝5時に起きて自己投資を」とか言われても、素直に受け取れるはずがありません。
完全に八つ当たりです。
本は何も悪くありません。
記録だけは残る
内容がほとんど頭に残っていない作品でも、僕はブクログに登録します。
読んだ(聴いた)記録だけは残したい。
履歴は増えていきます。
でも、内容は覚えていません。
僕は本を楽しんでいるのではなく、記録を積み上げているだけでした。
Audibleは悪くない
ここは強調しておきたいのですが、Audible自体はとても便利なサービスです。
目を使わずに本を楽しめる。
移動中や家事の合間に知識や物語に触れられる。
うまく使えば、生活の質を上げてくれるはずです。
“聴く”オーディオブックAudible
を選んだのは、動画で元を取ろうとして「観る」のがしんどくなったからです。
ただ僕の場合、Audibleでも元取りモンスターが大暴れして「観る」「聴く」のどちらにしても疲れました。
9割でやめておけばよかった
本をたくさん読みたい。
その気持ちは間違っていません。
Audibleも、確かに便利です。
ただ僕は、そこに「効率」と「元取り」という余計な要素を足してしまいました。
その結果、聴くことで楽になるはずだったのに、耳と脳が一番忙しくなりました。
ライフハックしようとして、またライフにハックされています。
やっぱり、9割でやめておけばよかった。
ただでさえ忙しいのに、聴く作品のジャンルを変えればうまくいくと思ってさらに失敗した話もあわせてご覧ください。


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